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2010年2月22日 (月)

落下係数について(101010追記あり)

(10/10/10追記:この記事に致命的な間違いがありました。詳しくはこちらの記事を参照してください。とりあえず誤りがある文章に打ち消し線を引いています。後ほど新しく記事を書きなおす予定です)

今回は落下係数の算出方式について。落下係数は他に墜落率と言ったりフォールファクターと言ったりもしますが、言い方の違いだけで中身は全く同じです。

前回の記事でお伝えした通り、この落下係数によって衝撃荷重の最大値が決定します。非常に重要な指標です。これを知らない人がロッククライミングやツリークライミングをやるのは危険だと思います。短距離墜落の怖さがわかっていない恐れがあります。

算出方式は以下のとおり。
落下係数=(墜落距離)/(作業者とアンカーの間にあるロープ長)


[例題ですよ]

以下のイラストを見てください。記号は、α:墜落係数、h:墜落距離、L:ロープ長、です。黒いボックスがアンカー。③の5m地点にある半円の輪っかは中間支点(ランナー)です。

Img_0009

①アンカーと同じ位置にいる場合。
作業者はアンカーと同位置にいます。ロープ長はL=5mとします。墜落した場合、ロープの長さに等しい距離を墜落する訳ですから墜落距離はh=5m。つまり墜落係数はα=1となります。

②ロープ長の最大まで自分がのぼっている場合
ロープ長を5mとすると、墜落距離は5+5=10mになります。墜落係数はα=2です。

③途中に中間支点を伴う場合(ロッククライミング的な手法)
ロープ長は10m。5m地点に中間支点があります。中間支点でロープが折り曲がって墜落距離は10mです。墜落係数はα=1。

④長距離の墜落
いきなり墜落距離が10000m(笑)。違う意味で死にそうな領域ですね。それでも墜落係数としては②と同じくα=2です。


[落下係数の特徴]
これでなんとなく雰囲気は掴んでもらえたでしょうか?墜落係数の特徴はこのようになります。

・墜落係数の最大値は2、最小値は0
墜落係数の最大値は基本的に2です。これは②で示したようにアンカーより上で、ロープがぴんぴんに張った状態で墜落する時に発生します。この状況、思っているより発生しやすいですよ。

アンカーと同じ位置から落下した場合の落下係数は1です。また、墜落係数が0っていうのがどのような状況かわかるでしょうか?そうです。単純にロープにぶらさがっている状態ですね。墜落といえるかどうかはわかりませんが。

・同じ人間が同じロープを使用している場合、墜落時の衝撃を緩和するには落下係数を下げるしかない
これ、前文の条件も大事です。前回も言いましたが、墜落時の衝撃の値を決定するのは、落下係数と墜落物の重量、そしてロープの伸び率です。前文の条件で2つの値が決定してしまっているので、あとは落下係数を可変するしかない、と言うことを伝えています。

・墜落係数は墜落距離のみで決まる訳ではない
墜落係数は墜落距離だけでは計れません。②と④を比べてもらえれば一目瞭然です。同じような状況(ロープぎりぎりまで登っている場合)なら、例え墜落距離が5mでも5000mでも、墜落係数=衝撃荷重の最大値は同じです。墜落距離が5mmでも同じですよ。短い墜落なら大丈夫だろって訳じゃないんです。

これ何故かわかります?感覚として長距離の墜落のほうが衝撃が多そうでしょ。例えばビルの1階から飛び降りるのと10階から飛び降りるのでは、明らかに衝撃が違いますよね。

[張力は一緒です]
落下係数は衝撃荷重の最大値を決める、と初めに書きました。状況としては墜落してロープが最大展張している時です。そしてこの時、ロープには最大張力がかかっています。張力とは、ロープを破断させようとする引っ張り力です。

ロープに吊られている状況で長距離墜落をした場合、アンカーと作業者間のロープの長さも長くなります(ロープが長くないと長距離墜落できないですし)。そしてロープが長くなった分、衝撃を拡散できる場所が増えている訳です。

前述のイラストの②④を思い出して下さい。同じ状況で墜落した場合、墜落距離が増えてもその分ロープも長くなるのだから、ロープ1m辺りにかかる張力はどちらも一緒って事です。詳しく知りたい方は前回もお伝えしたこちらのHPをみてください。

張力が一緒なんですから、最大張力も同じです。だから衝撃荷重の最大値も変わらないんです。

その代り、ロープ長が増えると墜落時のロープが伸びる距離と時間は長くなるので、アンカーへの負担は増化しています。そういう意味では、短距離墜落の方が全体のシステムに与える負荷は小さいです。

[ツリークライマーな方へ]
私の極個人的な意見です。確証はありませんが確信しています。上記の計算式で「アンカーと作業者の間のロープ」と書きましたが、DdRTの場合、ロープ長は「トップアンカーと作業者間のロープ長」で計算する必要があると思います。つまりロープエンドからスプリットテイル間のロープ長の半分って事です。

トップアンカーは中間支点として捉えそうになりますが、ここをアンカーとして見る方が正解だと思う訳です。墜落時に支点として機能するのはトップアンカーだからです。

そして、墜落時においてクライミングラインにかかる衝撃荷重は1/2になります。そのクライミングラインが二か所(ロープエンドとスプリットテイル)自分に繋がっている訳ですから、結局自分にかかる衝撃荷重は「1/2×2=1」で元通りですけど。

DdRTでの墜落は、ロッククライミングでいう「ダブルロープ」時の墜落と同じような挙動になると思っています。


[まとめ]
落下係数の怖さは、短距離墜落時に現れます。例えばアンカーと自分をカラビナのみで接続しているとします。カラビナの長さだけアンカーからちょいっと上に行けば、そこには落下係数2の世界が待っている訳です。しかもカラビナの伸び率はまったく期待できません。たぶん重篤な事故になるでしょう。これ、落下係数を知っていないとどれだけ危険な状況か想像できないと思います。

また、アンカーと同じ位置から墜落した場合、落下係数1です。ダイナミックロープを使用したペツルの「ジェーン」ですら、落下係数1でも衝撃荷重は7kNです。人体に無害であると言われているのは6kNまでですから、なにかしらの被害は受けるはずです。ダイナミックロープより伸び率の低いセミスタティック、さらに伸び率の低いアーボリストロープでは確実に激甚な被害が出ると思われます。

本当に気をつけてください。

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