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2011年3月18日 (金)

ブランメルスプライスのアイを再考する

以前、ブランメルスプライス(Brummel Splice)のアイについて記事を書きました(これこれ)。あれから色々な資料や意見を知り、考えがちょっくら変わったので、現在の意見を書いてみようと思います。
※注意してほしいのは、今回書いている内容は「ダブルブレイドのフリクションコード」だけに通じる話です。Ice-Tail等の12ストランド製品は関係のない話であります。なので記事内でフリクションコードと書いているのはすべて「ダブルブレイド」のコードの事です。

【コア(内芯)がめちゃ重要】
フリクションコードのアイをブランメルスプライスで作った場合、コードにかかる荷重はコア(内芯)だけで受け持つ事になります。外皮は単なるカバーの役割を果たすだけで、コードの強度にはほぼ関係していません。何故なら外皮はアイの手前で完全に切り離されていますからね(Whippingしている分の強度はあるでしょうが…)。外皮は摩擦からの防御、紫外線の防御、使用感の向上等などの役割を受け持ちます(これはこれで非常に重要)。

つまり、フリクションコードのアイをブランメルスプライスで作る場合、コアの性能が非常に重要です。
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【.コアだけで充分な強度を持つ必要がある】
ブランメルスプライスをする場合、コアが充分な強度を持つ事が必須条件になります。単なるポリエステルやナイロン素材のコアを持つコードは、恐らく充分な強度を出せないでしょう。例えばトイフェルベルガーのOcean。あれのコアは高性能ポリエステルです。8mmの場合、完全なコードだと20kN、外皮が破断してコアのみの強度は10kNになります(ファクトリースプライス、シングル吊りの場合)。

オーシャン8mmのアイをブランメルスプライスで作った場合、強度はコアだけで受け持つ訳ですから、MBS8~9kNくらいだろうと予想されます。ノットでアイを作る方がよっぽどましです。はっきり言って常用できる強度ではありません。だからこそ、WesSpurのお店でも、オーシャンはClass1スプライスで売られているのだと思います。

(ファクトリースプライスって何?と思われる方もいるかもしれません。これは製造メーカーが工場で作成したアイ・スプライスの事です。メーカーがコードに対して指定したスプライス方法を指す事もあります。オーシャンのファクトリースプライスは縫込み縫製、シェリルのグリズリースプライスみたいなもんです。)

(Ocean以外ですと、Bee-Line3/8inch(9mm)もコアがポリエステルです。絶対ブランメルスプライス・アイを作ってはいけません。)

【ダイニーマとスペクトラはやばい】
コアだけで充分な強度を出そうとした場合、高性能繊維を使用しないとなかなか厳しいでしょう。木登り人が使用するフリクションコードのコアによく採用されている繊維はテクノーラです。他にもベクトランを使用したコードもあります。

ただ問題はArmor-Prus。こいつはコアにスペクトラを採用しています。このコアは8ストランドなんですが、その内の6本がスペクトラ100%、残り2本がスペクトラとケブラーが50%ずつ、という構成になっています。(スペクトラはダイニーマとほぼ同義。商標の違いみたいなもんです。以下はダイニーマに統一します)

ダイニーマはかなり優れた性能を持つんですが、同時に凄まじい欠点を持ちます。それは融点が非常に低いという事。約135℃で強度が50%低下、約160℃で融解します。フリクションコードはクライミングヒッチを作る為の道具ですので、ヒッチの摩擦熱がモロに影響します。

もしArmor-prusをブランメルスプライスをした場合、コアが熱損傷を受けるとどうなるでしょうか。肝心の強度はコアだけで保持しています。たとえ外皮が損傷を全く受けなくても、コアが切れたらそこで終了です。

だからこそ、TreeToolsさんのブログで「Armor-prusのスプライスはブランメルじゃなくて、Class1がいいと思うんだ」と書いてあったんだと思います。

【Class2スプライスも同様です】
ここまでの話はブランメルスプライスだけでなく、Class2スプライスも状況は同様です。Class2も外皮同士は全くスプライスされていないので、両者は荷重はコアにがっつりかかる(Core-dependent)という点でほぼ同じです。Class2はアイ部分も外皮をまとっているというところが違いますね。(もちろん両者はスプライス方法が全く異なるので、他にも様々な違いがあります。Class2は強度低下がかなり少ない、ブランメルはスプライスが簡単で信頼性が非常に高い、って感じらしいです。)

【剥き出しのアイ問題】
高性能繊維は一般的に「耐光性に弱い」という非常につらい難点があります。Ultra-TechやBee-Lineのコアに使われている高性能繊維、テクノーラも耐光性はあまりなく、約3カ月の日光曝露で強度は約半分になることもあるそうです。これはなかなか由々しき事態です。

(ちなみにダイニーマは耐光性に優れています。結構珍しいです。だからこそあれこれ欠点はあってもロッククライミングのスリング素材に使用されるのかなーなんて考えています。)

普通にコアの役割を全うするなら、この耐光性はほぼ影響ないんです。外皮が光を遮って守ってくれるんで。ただブランメルスプライスしちゃうと、コアの部分は剥き出しになってしまうので、外皮のシールド効果は全く期待できません。

コアが剥き出しになってしまった事による弊害は他にもあります。繊維がばらけてしまう。コアが傷つきやすい。曲げ応力が増加する。などなど。

(ちなみに、ウルトラテックのコアに使われているテクノーラはおそらくコーティング処理がしてあります(青色の部分がそうだと思われる)。しかしアイ部分はカラビナに苛められるので、すぐに剥げてきます。ほとんど意味を為しません。)

【シールドがないなら、シールドしてあげればいいじゃない】
ブランメルスプライスのアイの事を考えれば考えるほど、外皮の役割の素晴らしさを痛感する訳ですが、嘆いてばかりもいられません。外皮がないならコーティングしてあげればいいんです。色々と調べたんですが、コーティング剤は市販されています。Star Brite「Dip-it, Whip-it」と、Yale cordage「Maxi Jaket」の2種類です。

私はWesSpurで「Dip-it…」を購入したんですが、あまり宜しくないかもしれません(汗)。海外BBSにて「Maxi Jaketの方が優れているよ」って意見もありました。でもマキシジャケットは取り扱い店が恐ろしく少ないのが欠点です。

まあでもコーティングすれば光を直接浴びる事はなくなります。それに繊維がばらけないので使用感も向上します。あとはそのコーティング剤をそんな用途で使っていいのかどうかって問題だけです。結構な大問題なんですけどね。

【まとめ】
そんな訳で、以前はブランメル・アイを毛嫌いしていたんですが、今は「コアに使われている繊維の性質を考慮した上で、剥き出しのアイをコーティングすれば充分使用可能なんじゃね??」という気持ちになっています。

注意したいのは、どのメーカーもブランメルスプライスを公式に認めていない点です。この意味を充分に考えてください。

もっと個人的な意見を言いますと、「いやいや、シェリルのグリズリースプライス製品が最強でしょう」と思っています。色々な方からの情報のおかげで積年の悩みだった「シェリルの配送料が馬鹿高い」問題が無事解決しそうなので、わざわざWesSpurでブランメルスプライス製のフリクションコードを買う必要がなくなってきたんですよね(笑)。

グリズリースプライス大好きです。スプライスによるコードの肥大化・硬化もないですしねー。5/16inchウルトラテックなんて細すぎてちょっとびっくりするくらいです。でも縫製部分が巨大化するので、そこをどう判断するかによって評価は変わるでしょう。すべての人に「これはマストアイテムだ!!」と言えるようなギアは絶対存在しないです、はい。

次回はDip-It,Whip-Itの使用感を書きたいと思います。

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