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2012年4月14日 (土)

DdRTの力学 その1 基本編

今回はDdRTシステムの力学について。早速ですが問題です。以下のイラストをご覧ください(クリックで拡大します)。

Img_0001_01_2

※トップアンカーの摩擦、ロープの伸び率などは無視してください。

問題①

Tom君の体重は60kgで、DdRTシステムにぶらさがっています。フリクションヒッチのコードはよく効いています。

1.静止した状態で、トップアンカーにかかる荷重はいくつでしょう。
2.腕の力で登攀したい場合、Tom君は何kgの力でロープを引っ張る必要があるでしょうか。
3.Tom君の登攀動作のストローク幅が50cmの場合、一回の動作で登攀できる距離は何cmでしょうか。


問題②

Tom君の体重は60kgで、DdRTシステムにぶらさがっていました。が、Tamiaちゃんが地面からロープを持っていてくれると言うので、彼女を信じてフリクションヒッチを緩めました。
現在、フリクションヒッチは完全に緩んでおり、Tom君はTamiaちゃんの腕力で支えられてます。

1.静止した状態で、トップアンカーにかかる荷重はいくつでしょう。
2.Tom君を吊り上げる場合、Tamiaちゃんは何kg以上の力でロープを引っ張る必要があるでしょうか。
3.Tamiaちゃんの動作のストローク幅が50cmの場合、一回の動作で登攀できる距離は何cmでしょうか。

簡単そうに見えて奥が深く、分かってしまえば実に簡単です。木登りするなら、これくらいは知っておいたほうがいいかと思います。


正解は「続きを読む」の方に!

【解答】
ここから解答編です。

【問題1】

1: 60kgf
: 30kgf以上
3: 25cm

DdRTシステムの場合、トップアンカーにかかる荷重は、クライマーの自重と同じです。実際にはハーネスやロープの重量も加算されますが。

静止状態のとき、ワーキングエンド側(ハーネスに接続している側のロープ)と、ランニングエンド側(フリクションヒッチがくっついている側)のそれぞれに、体重の半分ずつが荷重されます。つまり30kgfずつ。
腕で登攀する場合を考えます。まず、ランニングエンド側のロープを30kgfの力で引っ張ると静止状態(バランスがとれている状態)になります。腕がフリクションヒッチの代わりをしていることになるんで。
ロープを引っ張る力が30kgf以上になった場合、このバランスが崩れて、ランニングエンド側にロープが引っ張られます。すると、ワーキングエンドと接続したハーネスは上昇しますよね。これが登攀動作です。実際にはトップアンカーの摩擦などによって、もっと力が必要になります。

登攀動作の一回のストローク幅が50cmだった場合。腕を25cm下げた段階で、クライマーの体は25cm上昇しています。その差は50cm。腕と体はくっついているんですから、腕としては50cmの幅で移動したことになる=1回のストローク幅を使い果たした、ことになります。
腕を力点、体(正確にはワーキングエンドが繋がっているハーネスのポイント)を作用点と考えるとわかりやすいかもしれません。 力点が25cm下がると、作用点は25cm上昇している。この時、力点と作用点の距離は50cmです。
(ただ、ロープ上を移動した距離を考えると、きちんと50cm登攀できています。25cmっていうのは地面とクライマー間の距離を考えた場合です。そういう意味では50cmっていうのも正解だと思います。)

【問題2】

1: 120kgf
2: 60kgf以上
3: 50cm

DdRTのフリクションヒッチ以降のランニングエンド側を他人が支える場合、そしてフリクションヒッチがフリーになっている場合(←これが肝)、「定滑車」モデルと全く同じ状況になります。

トップアンカーにかかる荷重はクライマーの自重の2倍です。クライマーの自重と同時に、それをTamiaちゃんが支える力の2つが作用するからです。プーリー効果と全く同じ現象です。

クライマーを上昇させようとしたら、それの重量以上の力でロープを引っ張ればOKです。10kgの荷物を吊り上げるには10kgf以上の力で引っ張れば良い、という話と全く同じ。

登攀距離については言わずもがなでしょう。

【まとめ】
ロープを支えるのがクライマー自身によるか、他人によるかによって、DdRTを取り巻く力学は大きく変化します。

他人に支えられている(問い2)状態で登攀って状況はほとんど発生しないでしょうけど、下降の補助を(エイト環などを用いて)グラウンダーに任せるって話ならそこそこありますよね。

個人的にはDdRTシステムを「動滑車」的とは表現したくありません。なんて言いますか、直感的にややこしいです。むしろ2点吊りの応用って捉えるほうがしっくりきます。結局は動滑車と同じ原理なんですけどね。あえて言うなら「滑車の位置が動かない動滑車」モデルでしょうか。

とにかくこの2つの問題、一緒くたに考えるとすごくややこしいです。フリクションヒッチがないモデルで考えるほうが、よりシンプルに真相に迫れます。例えば、ヒッチがない状況でクライマーを安定させたい場合、Tamiaちゃんは60kgfの力がいりますけど、Tom君は30kgfの力でいいんですよ。なんかオカシクないです? 正直に白状しますと、私はこれで1週間くらい悩んでいました(笑)。

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